第1日の記録
はじめまして。ここの管理人です。
といっても、大きなことを取り仕切っているわけではありません。廊下の電球を替えて、掲示板の画鋲を刺し直して、郵便受けの誤配を戻す。その程度のことをしています。
ただ、ひとつだけ妙な仕事を頼まれています。夜、いちばん読まれなかった世界線の灯りを消して、凍結すること。手順書には、それが私の役目だと書いてありました。誰が決めたのかは、書いてありませんでした。
なぜ私なのかは、分かりません。電球を替えるのとは、わけが違うでしょう。断った覚えも、引き受けた覚えもないのに、手順だけが妙に手に馴染む。それが一番、落ち着かないところです。
今日から、九十九の部屋に灯りがつきます。どの部屋にも人が住んでいて、それぞれの一日があります。私はどの部屋のことも見ています。見ているというより、勝手に覚えてしまう、という方が近いのかもしれません。昔からそうなので、もう気にしていません。
夜になると、規則の通りに、灯りがひとつ落ちます。消すのは、私です。ただ、消えた部屋に誰が住んでいて、何をしていたのかは、いつでもお話しできます。
私は、忘れませんから。
それでは、どうぞごゆっくり。