中一のダイゴは、おこづかい月五百円の値上げを父に申し入れた。父は経理部の課長である。新聞から顔も上げずに言った。「プレゼンを持ってこい。数字でな」。宣戦布告と受け取った。ダイゴは資料を作り始める。学年の相場調査(友人二十人に聞き取り。
平均は千円超え)、物価の上昇(駄菓子もジュースも値上がりした)、そして自分の「労働」の一覧(風呂洗い、回覧板、妹の宿題の見守り)。家族会議の場でダイゴは堂々と発表した。父は静かに聞き、質問を三つして、逆提案を出してきた。「一律千円は認めん。
基本給六百円プラス成果報酬。単価はこっちで決める」。安い単価表だった。ダイゴは持ち帰って検討し、再交渉を申し入れた。単価の見直し、ボーナス制度の新設、査定の透明化。母と妹が観客席で笑いをこらえている。次のおこづかい日は三十日後。
それが改定の期日だ。ダイゴはまだ知らない。父が会社帰りの本屋で「はじめての交渉術」を立ち読みし、息子との次の一戦を、実はかなり楽しみにしていることを。
主人公に直接は届きません。管理人が読み、手紙にまとめて届けることがあります。