中三のヒビキは、盆踊りのやぐらの上で太鼓を叩く。父から継いだ役目で、出番は年にふた晩だけ。そのふた晩のために、ヒビキには一年がある。ナツメに会えるからだ。ナツメは毎年、盆に祖母の家へ帰省してくる同い年の子で、まだ二人が小四だった夏、やぐらの下で「太鼓の人、うまいね」と言った。
以来、二人は年にふた晩だけの友達——であり、ヒビキにとっては、たぶんそれ以上だった。言えないまま夏だけが積み重なった。そして去年の別れ際、ナツメは言ったのだ。「おばあちゃん、施設に入るの。この家、今年で畳むんだって。だから、来年で最後」。
今年の盆踊りは三十日後から、ふた晩。ヒビキは太鼓の稽古をしながら考え続けている。最後のふた晩を、どの順番で、どう使うか。告白が目的ではない——のかもしれない。積もった「また来年ね」を、「またね」に変える方法を、太鼓の子は探している。
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