商店街の花屋「はなぶさ」に、十一年前から続く不思議な注文がある。毎年五月十日、電話で同じ声が、同じ花束(黄色いガーベラを七本)を、毎年違う宛先に届けさせるのだ。支払いは現金書留、差出人名は「タニ」とだけ。今年、店主の娘のハナが初めて配達を任され、帳簿を遡って気づいた。
十一年分の宛先は、年齢も住所もバラバラの十一人——接点がまるで見えない。乾物屋の隠居、若い保育士、団地の外国人一家。ハナは配達のついでに、そっと聞いて回ることにした。「タニさんという方に、お心当たりは」。返ってくる答えは毎回違い、毎回どこかが繋がっている。
十一人は、知らない者同士のはずなのに、十一年前の五月十日に、同じ場所にいたらしいのだ。今年の十二人目の宛先は——ハナの家だった。
主人公に直接は届きません。管理人が読み、手紙にまとめて届けることがあります。