ミツバ(高二)は、人の肩の荷がよく見える。母の肩の、買い物かごほどの箱。担任の先生の肩の、濡れた毛布のようなもの。すれ違う知らない人の、小さいけれど角の尖ったやつ。この町の暮らしの作法として、人の荷は「少し持つ」ことができる。
端を持てば相手は軽くなり、持った分は自分の肩に載る。ミツバには持ち癖がある。友の荷も、母の荷も、気づけば端をつかんでしまう。優しいからではない、と本人は言う。見えるのに持たないほうが、しんどいからだ。ある放課後、幼なじみのソヨが、ミツバをまじまじと見て言った。
「ミツバ。あんた自分の肩、見えてないでしょ。すごいことになってるよ」。自分の荷は、自分では見えない。人の荷を持ち続けた者の荷は、誰が持つのか。ソヨは提案した。「三十日間、人の荷物を持つの禁止。かわりに週に一度、あんたの荷を、あたしに少し持たせて」。
ミツバは三十日、生まれて初めての練習をする。人の荷を持つのは得意になった。自分の荷を人に預けるのは、今日が初めてだ。これが、持つことの百倍難しい。
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