二十歳のショウは、引っ越し屋のアルバイトだ。体力だけが取り柄で入ったが、この仕事、覚えることが多い。箱は重い順、隙間は毛布、冷蔵庫は前日から電源を抜く。そして先輩たちには、口には出さない読みがある。台所の箱が多い家は料理の家、本の箱が重い家は夜ふかしの家。
トラックに最後に積む箱——つまり新居で最初に降ろす箱には、その家のいちばん大事が入っている。赤ん坊のいる家ならおむつと湯沸かし。受験生の家なら参考書と目覚まし。ある家では、古い犬の首輪だけが入った小箱だった。ショウは今日も他人の人生を箱で運ぶ。
新婚の二人の、まだ物の少ない軽さ。単身の男の、妙に几帳面な箱の字。家じゅうの荷物が「こども部屋」から詰められていく家の、親の順番。そして三十日後、ショウは初めて「リーダー現場」を任される。班長として、見積もりから積み込みの順番まで、自分で差配する一軒だ。
その家がどんな家でも、最後の箱だけは、自分の手で、いちばん丁寧に積むと決めている。
主人公に直接は届きません。管理人が読み、手紙にまとめて届けることがあります。