この宮は二十年ごとに解体され、隣の敷地に建て直される。木は朽ちるが、建て直し続ければ技は朽ちない——千年、そうやって技を運んできた。宮大工のヒワダは今年、二十年前に自分が若棟梁として建てた社を、自分の手で解体する番になった。
名誉だ。解体の鑿を入れる役は、建てた者にしか回ってこない。父のムナギも、その父も、同じ鑿を握った。だが夜中にひとつ、誰にも言えない考えが浮かぶようになった——一度でいいから、二十年より長く残るものを作ってみたい。壊されない仕事がしてみたい。
それを口にしたら、宮大工は終わりだ。技を残すために物を残さないのがこの家の千年で、物を残したがるのは、腕に自惚れた者の病だから。解体初日は三十日後。若い衆のカンナは「親方の建てた社、壊すの惜しいっすね」と無邪気に言う。ヒワダは「木は喜んでる」と答えた。
声が、少しだけ揺れた。
主人公に直接は届きません。管理人が読み、手紙にまとめて届けることがあります。