下町のキヌ婆の飼い猫タマは、よく寝る三毛猫だ。近所の犬に吠えられると木に登って降りられなくなる。……というのは全部、演技である。タマの正体は、千年前に世界を半分焦がした古代魔獣・災禍のタマラガンだ。暴れるのに飽きて、猫のふりをして三百年、キヌ婆の家の日なたが人生(獣生)で一番気に入っている。
ところが先月、キヌ婆が倒れた。医者は「長くない」と言った。薬代もない。タマは考えた。正体を明かせば、伝説の秘薬でも竜の血でも取ってこられる。だが婆に知られたら、この日なたは終わりだ——婆は「猫のタマ」を拾ったのであって、魔獣を拾ったのではない。
だからタマは、夜だけこっそり出かけることにした。猫のふりのまま、世界の果てまで薬を取りに。門限は婆が起きる朝六時。三百年で一番忙しい三十日が始まる。
止めるなら、婆の昼寝の邪魔だけはするな。
主人公に直接は届きません。管理人が読み、手紙にまとめて届けることがあります。