目抜き通りのゴミ集積場が、カラスの群れに荒らされて三年になる。ネットも、かかしも、超音波も、ひと月で全部破られた。町内会長のマルヨシが最後の手段として頼ったのは、「カラス博士」と呼ばれる中三のツグミ——群れの顔ぶれと親子関係を一羽ずつ見分けられる少女だ。
彼女の武器は、銀紙とビー玉とクルミの入った実験道具箱と、屋根の上から群れを見張る根気である。ただし彼女には、依頼主に言っていないことが一つある。彼女はカラス側の味方なのだ。引き受けたのは、町内会が次の手として駆除業者を呼ぶつもりだと知ったから。
ツグミの狙いは追い払いではなく、停戦協定である。群れのボス「カシラ」(左の風切羽が一本だけ白い)を相手に、「ゴミを荒らさない代わりに、餌場と水場を公認する」という条約を結ぶ。餌の置き方、時間、距離——言葉の通じない相手との交渉は、一手ずつが実験だ。
そして人間側にもカラス側にも、停戦に反対する強硬派がいる。
主人公に直接は届きません。管理人が読み、手紙にまとめて届けることがあります。