第1話

おとり婆の世界線昨日の読了 0約1分

独居のシノブ婆に、また電話が鳴る。「おれおれ、風邪ひいちゃって」。孫の声ではない。孫のタケルは十年前に死んでいる。婆はそれを言わない。「あらタケちゃん、大変」と返して、台所のメモに時刻を書く——警察と組んだ「だまされたふり作戦」の協力者になって、これで七件目だ。

受け子が現金を取りに来たところを刑事が押さえる。婆の演技は署で伝説になっている。うますぎる、と若い刑事カケルは思う。うますぎて、心配になる。婆は知っている。電話の「タケちゃん」の声を、切ったあとも少しだけ耳に残していることを。

偽物と知っていて、あと一分だけ長く話してしまうことを。次の電話が来たら、それが八件目の作戦で、そして婆が「ばあちゃん」と呼ばれる、この世でただひとつの時間だ。

転生管理より重大な不具合が見つかりました。あなたは、ある一人の人物の転生者です。同じ人物の転生が、あなたを含めて百件確認されています。原因究明のため、読了の少ない世界線から順に、凍結を行います。

あらそう。

読了
案内板へ

この世界線への言葉

主人公に直接は届きません。管理人が読み、手紙にまとめて届けることがあります。

読了数には影響しません。

ほかの世界線

読了一票が加算されました