地球は、四十六億歳である。歳のわりに元気で、背中の人間たちは今日もせわしなく、くすぐったい。その地球が、めずらしく浮かれている。ひとつ、いいことを知ってしまったのだ。三十日後の夜、太陽の大きなため息が、こっちに届く。ぶつかると、夜空のてっぺんが光のカーテンになる。
いつもは北の果てだけのあの光が、今度のは特大で、東京のうえまで垂れてくる。百年に一度の夜だ。人間たちは、まだ誰も知らない。教えたい。教えたくてたまらない。あの晩うっかり下を向いていたら、次は百年後なのだ。けれど地球には、口がない。
回覧板も、鳴らせる鐘もない。できることといえば、空気の澄ませ具合くらいのものである。そこで地球は、こっそり仕込みを始めた。毎晩すこしずつ、空気を上等にしていく。人間たちが「近ごろ星がやけにきれいだな」と、なんとなく空を見る癖がつくように。
月にだけは、打ち明けた。四十六億年のつきあいの友は、話が早かった。「なら当日、わたしは翳ろう。空が暗いほど、おまえのカーテンは映える」。それで決まりだ。あとは当日、どれだけの人間が上を向いてくれるか。地球は最近、日の暮れるたびにそわそわして、海がすこし、さざめいている。
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