カリン(高二)は、テニス部のレギュラー最後の一枠を、同期のアイラと争っている。そしてカリンには、嫉妬のたびに発動する厄介な目がある。アイラのサーブが決まった瞬間、見えてしまうのだ——雨の日の壁打ち、通学前の素振り、テーピングの下のまめ、去年の敗戦の夜に一人で書いた反省の紙。
嫉妬するたび、憎むための材料が、尊敬の材料に変わってしまう。「あの子は天才だから」と言えたら、どれほど楽か。見えてしまった以上、言えない。あれは天才ではない。自分より多く打った人だ。それでも、悔しさは消えない。ここがカリンの発見だった。
尊敬と悔しさは、両立する。むしろ両方本物のときだけ、練習は質が変わる。カリンはアイラの履歴に自分の履歴をぶつけ始める。向こうが雨の日に壁を打つなら、こちらは朝のコート整備と百本のリターンだ。部内戦は三十日後。カリンの目標は、変わった。
見えた履歴の全部を認めた上で、それでも勝つ。相手を下げずに勝つ勝ち方だけが、あの目に見合う勝ち方だ。
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