第1話

判子の世界線昨日の読了 0約1分

竹馬の友の証文に判を突いた金物屋のテツは、友の夜逃げで店と家を失った。三十日後に店の明け渡し。テツは最後の三十日を、友を探す旅に使うと決めた。殴るためだ。手掛かりを辿って町から町へ。ところが旅の荷物が悪い——出てくる手掛かりが、全部思い出なのだ。

友と二人で担いだ祭りの神輿の町。友が無銭飲食で捕まって、テツが判子でなく頭を下げた食堂。探せば探すほど、憎むための旅に、愛の在庫が積み上がっていく。願いは殴ることだったはずだ。いまは少し違う。殴る前に、一発じゃなく、まず「なんでだよ」と聞きたい。

聞いたら殴れなくなる気がして、それが一番怖い。

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