この国の民は、一生にひとつ、何かを発明して国に納める義務がある。「発明の納め」——大きさは問われない。画期的な農具でもいいし、縄の結び方ひとつでも、腰の痛くならない座り方でもいい。納められた発明は国の納め堂で誰でも写せて、この国の暮らしは、無数の小さな発明の積み重ねでできている。
納めの期限は、三十五になる年の、国の納め日だ。デンは、その納め日まであと三十日になった。何も、思いつかないまま。手先は不器用、頭は普通、畑仕事はまじめにやってきたが、発明と呼べるものは何もない。焦って納め堂に通い、先人の納め物を写しては打ちのめされる。
「片手でしばれる結び方」「泣く子が笑う抱き方」「雨の日に滑らない草履の裏」——みんな、よく見つけたものだ。三十日、デンは国中の「納めに困った人」の話を聞いて回り始める。聞けば、いた。うんといた。期限の前夜に夜どおし唸って諦めた男、他人の発明を写して恥じて生きた女。
そしてデンは気づく。自分がいま一番詳しいのは、発明の見つけ方ではない。見つからない人の、苦しさと居場所のなさだ。納め日の朝、デンが納め堂に持っていくものが、この国の納めの歴史を少し変える。
主人公に直接は届きません。管理人が読み、手紙にまとめて届けることがあります。