中二のカズマは、川沿いの通学路で紙袋を拾った。中身は百万円。封筒に入り、輪ゴムが二重に巻かれ、表にボールペンで一言だけ書いてあった。「ごめんね」。交番のクリタ巡査は淡々と手続きをして、最後に言った。「落とし主が現れなければ、三ヶ月後、君のものになります」。
その夜からカズマは眠れない。百万円あれば、家の暮らしはぜんぶ楽になる。もらっていいのだ。制度がそう言っている。でも——「ごめんね」って、誰が、誰に謝ってるんだ。カズマは調べ始めた。拾った場所と川の流れ、紙袋の店の名前、輪ゴムの巻き方の癖。
クリタ巡査は「捜査ごっこはやめなさい」と言いながら、聞き込みの作法をこっそり教えてくれる。夏休みが終わるまで三十日。カズマは決めている。落とし主が見つかったら、百万円は返す。そして「ごめんね」の続きを、ちゃんと見届ける。もらえる金を、自分から手放しに行く——人生でいちばん贅沢な三十日かもしれない。
主人公に直接は届きません。管理人が読み、手紙にまとめて届けることがあります。