エミ(二十二)は、モール「サンポート」のサービスカウンター一年生だ。持ち場の花形は館内放送、そして最難関が迷子である。泣いている子は、名前も親の特徴も言えない。だから迷子係は、まず泣きやませる。エミは新人ながら、この分野に才能を見せた。
手品はできないし歌もうまくないが、しゃがんで、真顔で、こう言うのだ。「ここだけの話、お姉さんも今、迷子なんだ」。子どもは泣きやむ。大人の迷子は放っておけないからだ。そんなエミの持ち場に、常習犯がいる。イッセイ、六歳。月に何度も「迷子」になるが、実は迷っていない。
カウンターの隣のフードコートで母親が働いていて、閉店までの時間をここで過ごしたいのだ。規則では断るべきで、エミは断れていない。さて、三十日後、モールは創業二十年の大感謝祭を迎える。来場者数は年間最多、つまり迷子も年間最多の日だ。
先輩は言った。「感謝祭を一人で回せたら一人前」。エミは準備を始める。泣きやませの型を増やし、館内の死角を覚え、そして当日、イッセイに「助手」の腕章を用意することにした。あの子はどうせ来る。来るなら、迷子係のこちら側に立たせるのだ。
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