駅前商店街の小さな宝くじ売り場に、テルミは二十年座っている。通りの向かいは老舗の大型売り場で、「一等出ました」の垂れ幕が三本、風にはためく。テルミの店は開店以来、大きい当たりを一度も出したことがない。運を売る商売の、運のない店。
それでも常連は来る。定年後、毎週同じ数字を買いに来るマツさん。「あんたの『当たるといいね』は本物だから」と言って、外れ続けた券を財布の同じ場所にしまう。テルミは知っている。当たりくじは印刷所ですでに決まっていて、どの店に届くかは物流の偶然で、自分の「当たるといいね」は確率に一ミリも影響しない。
知っていて、毎回、心の底から言う。それしか売るものがないからだ。向かいの主人ダイキチは悪い男ではないが、垂れ幕を増やすたび、こちらに小さく頭を下げるのがかえって堪える。年末ジャンボの発売が三十日後に始まる。テルミは今年も、のぼりを一本だけ立てる。
「夢、あります」。二十年前に自分で書いた、少し曲がった字だ。
主人公に直接は届きません。管理人が読み、手紙にまとめて届けることがあります。