ススム(三十一)は、結婚相手探しのアプリで一年、成果ゼロである。写真は奇跡の一枚、趣味は「カフェ巡り」(本当は家の番茶)、休日は「ジム」(本当は昼寝)。ある夜、盛りに盛った自分の欄を眺めて、ばかばかしくなった。この欄の男が実在しないなら、会ったあとに困るのは俺だ。
ススムは全部書き直した。「年収、普通です。料理は目玉焼きだけ。日曜は昼まで寝ます。人の話を聞くのは得意です。あと、雨の日の匂いが好きです」。反応は消えた。ひと月分の「いいね」がゼロになった——一件を残して。ミズホ、二十九歳。
プロフィールにこうあった。「五年履いてる靴があります。映画は途中で寝ます。仕事はまじめにやっています」。同類だ、と直感した。やりとりは、驚くほど楽だった。盛っていないから、会う前に減点される心配がない。さて、ススムの有料会員の期限は三十日後。
更新はしない、と決めている。この三十日で初めて会って、二度目に会って、アプリの外の連絡先を——つまり、現実を始めるのだ。盛らない者同士、最初の待ち合わせ場所の相談から、もう正直で笑える。「駅前の、混んでない方の店で」。
主人公に直接は届きません。管理人が読み、手紙にまとめて届けることがあります。