高三のタイガは、バイト先のコンビニで「発注」を任されている。明日この町で何が売れるかを読んで仕入れる仕事で、タイガはこれに受験勉強の百倍本気である。そんな折、オーナーが「テレビで話題だから」と独断で仕入れた激辛カップ麺が、まるで売れずに三百個、事務所に積み上がった。
賞味期限は三十日後。タイガは腕まくりをして、最初の一週間、得意の読みで挑んだ。暑い日に山積みし、部活帰りの時間に前へ出し、読みどおりの棚を毎日作った。結果——売れない。タイガは思い知る。読みで売れるのは、もともと欲しい人がいる物だけだ。
毎日満点の棚に置いても、来ない日は来ないし、売れない物は売れない。この麺はまだ、この町の誰の瞬間とも結ばれていないのだ。タイガは方針を変えた。品物の横に、手書きの一言を置く。「テスト最終日、頭をからっぽにしたい人へ」「失恋には、辛さで上書きという手があります」「今日がんばった人は、泣いても辛さのせいにできます」。
商品を説明するのをやめ、誰のどんな日のための物かを言葉にする。棚の一言は日替わりで、外した日は書き直す。三百個の山が、少しずつ、誰かの夜に変わっていく。
主人公に直接は届きません。管理人が読み、手紙にまとめて届けることがあります。