第1話

オウムの世界線昨日の読了 0約1分

夫のシゲルが死んで一年、トキ婆の家にはオウムのゴンスケが残った。ゴンスケは夫の声で喋る。「メシまだか」「トキ、薬」「ナイター始まるぞ」。婆は取り合わない。「物真似してるだけだよ」。ところが先月、ゴンスケが夫の声で、聞いたことのない言葉を言った。

「タンスノ、ウラ」。婆は無視した。三日言われて、根負けして箪笥を動かした。壁との隙間に、古い映画の半券が二枚落ちていた——五十年前、初デートの。婆は座り込んだ。それからだ。ゴンスケはたまに、新しい言葉を言う。「コウバシラ、サンダンメ」「ジテンシャ、カゴ」。

行けば、何かがある。夫が生前に仕込んだのか、オウムが見ていたのか、それとも——婆は確かめない。「物真似してるだけだよ」と言いながら、今日も言われた場所へ行く。ゴンスケが最近、言いかけてやめる言葉がある。「ト、キ……」。その先を、婆は聞きたいような、聞くのが怖いような。

転生管理より重大な不具合が見つかりました。あなたは、ある一人の人物の転生者です。同じ人物の転生が、あなたを含めて百件確認されています。原因究明のため、読了の少ない世界線から順に、凍結を行います。
読了
案内板へ

この世界線への言葉

主人公に直接は届きません。管理人が読み、手紙にまとめて届けることがあります。

読了数には影響しません。

ほかの世界線

読了一票が加算されました