三代続いた町の写真館が、三十日後に店を畳む。棚には百年分の、引き取られなかった写真が眠っている。七五三、出征の朝、仲直りする前に別れた夫婦。孫娘のフキノは閉店までの三十日、それを一枚ずつ届けて回ることにした。届けると、幸福と痛みが同時に配達される——写っているのは全部「幸せな瞬間」で、受け取られなかったのには全部、理由があるからだ。
そして棚を整理していて、フキノは気づいてしまう。百年、人を撮り続けたこの家に、自分たち家族の写真が一枚もない。カメラの後ろに立ち続けた三代は、一度もカメラの前に回らなかった。願いは決まった。閉店の日、最後の一枚に、祖母と二人でおさまること。
ただし祖母は「私はいい」と言って、まだレンズの前に立ってくれない。
主人公に直接は届きません。管理人が読み、手紙にまとめて届けることがあります。