サユリ(三十八)は、三人家族の家計を預かる主婦であり、狩人である。獲物はポイント。スーパーの倍デー、ドラッグストアのはしご、支払いの経路をひと工夫して二重取り、レシートの応募は締切三日前が狙い目。夫が「そこまでやるか」と笑った夜、サユリは手の内を見せた。
この一年の獲得ポイント、締めて八万円ぶん。夫は正座した。サユリの狩りには目的がある。家族三人、飛行機に乗って、南の島に行くこと。旅行代を家計から出せば、暮らしのどこかが痩せる。だからポイントで行くのだ。誰の我慢も乗せずに、まるごと「おまけ」で作る旅。
現在の残高は、旅費の八割。そして三十日後、年に一度の決算大還元デーが来る。ここで残りの二割を狩り切れるかが、夏の島の分かれ目だ。サユリは台所の壁に予定表を掲げ、家族に号令をかけた。夫は買い出し班、息子はアプリのクーポン係。
「いい? 当日は開店と同時に三手に分かれます」。家族は初めて知る。母の狩りは、家族旅行という名の、静かな愛の遠征だったのだ。
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