ポメラニアンのゴマは、自分を大きな生き物だと信じている。証拠ならある。宅配の人が来れば家じゅうに知らせるのはゴマだし、掃除機という怪物と互角に渡り合えるのもゴマだけだ。ゴマの家族は、母さんと、小一のミオ。ゴマの仕事は、ミオを守ることである。
そのミオの様子が、最近おかしい。学校から帰る時間が遅くなり、遠回りの道の匂いをつけて帰ってくる。理由は散歩で分かった。通学路の角の家に、大きな犬が来たのだ。黒くて、ゴマの十倍あって、フェンス越しに吠える。ムクというらしい。
ミオはあの角を通れなくなっていた。だがゴマには分かる。ムクの吠え声は、奥が震えている。引っ越してきたばかりで、怖くて、吠えるしかないのだ。人間には、それが分からない。そして三十日後、ミオの学校で「犬とふれあう授業」があり、飼い主の爺さんとムクが来ることが決まってしまった。
ミオは今から泣きそうである。ゴマは決めた。毎朝の散歩をあの角に向けさせ、フェンスのこちら側に、ただ座り続ける。震えているムクと、震えているミオの間に、自分の小さな体を置き続ける。間に立つのに、大きさは要らないのだ。
主人公に直接は届きません。管理人が読み、手紙にまとめて届けることがあります。