小六のテンは、四年生のときに気づいた。校長先生の月曜朝礼の話には、実は毎回ちゃんと「構成」がある。つかみ、本題、たとえ話、着地。以来、テンは全校集会のたび、密かに採点をつけてきた。ノートの名は「校長採点表」。項目は五つ——つかみ/脱線率/たとえ話の切れ味/時間管理/着地の美しさ。
二年半で採点は五十九回。最高得点は運動会中止を告げた雨の日の演説(92点。「あの日の校長は本物だった」)、最低は創立記念日の27点(三回同じ話をした)。この採点表の存在は、親友のガクしか知らない。さて、卒業式まで三十日。テンは決めていることがある。
卒業式の校長式辞——それが六十回目、最後の採点だ。そして式のあと、あの分厚いノートを、校長に手渡す。怒られるかもしれない。でもテンは知っている。二年半つけてきた者だけが知っている——校長の話は、この二年半で、確実にうまくなっているのだ。
誰も聞いていないと思われている場所で、あの人はずっと推敲していた。それを知っているのが自分だけなのは、もったいない。
主人公に直接は届きません。管理人が読み、手紙にまとめて届けることがあります。