高二のヒナは、全国模試で九回連続二位である。一位は九回とも同じ名前——「北条ミナト」。会ったことはない。顔も、性別すらも知らない。ただ毎回、成績表の自分の一行上にその名前がある。ヒナは認めている。この二年、自分を机に向かわせてきたのは、志望校でも親でもなく、あの五文字だ。
悔しくて、ありがたくて、もはや戦友に近い。ノートの表紙の裏には、九回分の点差が書いてある(最小8点、最大31点)。さて、三十日後、全国の上位五十人だけが招かれる特別講習が、東京である。名簿にあの名前があった。ヒナは新幹線の切符を買った。
目標は、勝つこと——ではない。もう決めている。初日に、自分から声をかける。「はじめまして。九回、あなたの下にいた者です」。言えるだろうか。相手は自分を知っているだろうか。一行下の名前を、あの人は一度でも見たことがあるだろうか。
主人公に直接は届きません。管理人が読み、手紙にまとめて届けることがあります。