県立東高校吹奏楽部が自由曲に選んだ交響詩は、演奏時間十三分十秒。コンクールの規定は十二分。つまり、一分十秒をどこかで「カット」しなければならない。部長でクラリネットのチカは、スコアに鉛筆を握ったまま三日動けずにいる。顧問は言った。
「カット案は部長が作れ。それが部長だ」。問題は一つ。曲のいちばん美しい一分は、オーボエのソロ——三年間ずっと日陰だった親友のマコが、初めてもらった見せ場だ。そこを切れば、曲は綺麗に十二分に収まる。誰が計算してもそうなる。マコ本人までが言った。
「うち切っていいよ。勝ちたいじゃん」。言われた夜から、チカは眠れない。県大会は三十日後。スコアの余白に、チカは百通りのカット案を書いては消している。百一通り目を探して——全員の音を、一小節ずつ削ってでも。
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