この海峡では、夕刻の四半刻だけ砂の道が浮かび、東西の島の民が道の上で市を開く。売り切る前に、潮が戻る。刻限役のシオの「仕舞い!」の触れで、市は毎日、必ず途中で終わる。触れが早ければ商いが死に、遅ければ人が死ぬ。シオは十一年、一人も死なせていない。
そして十一年、一度も市の客になれたことがない——刻限役は売り買いを禁じられている。潮を読む者が品物に気を取られたら、全員が沈むからだ。誰よりも市を愛している人間が、毎日、市をいちばん早く去り、市を殺す係をやっている。彼の願いは、一度でいいから客として市を歩き、「仕舞い」の触れを聞く側になること。
だが後継の少年カコは、まだ潮が読めない。
市を止めるのは、潮だけでいい。
主人公に直接は届きません。管理人が読み、手紙にまとめて届けることがあります。